無料ご相談・お問い合わせ ZOOMでご相談も可能

奈良県橿原市にある鍼灸院・接骨院

ブログ

朴庵先生の症例の考察

古方を勉強する上で、荒木朴庵(故 荒木性次先生)の考え方は非常に勉強になるので、荒木先生の著書の七合の症例を参考に少し記載したいと思います。

記載がある部分はP57〜P58の内容になります。何文昭和20年代に書かれた書物ですので、言葉の表現が少し違うので、要約しながら書きたいと思います。

女性で年齢59歳が数十年の難病があって、長年の凍るような冷え込みよるものなのか、どの医者も全て治らないといい、しかしながら事情があってもう10年ほどは石に嚙りついてでも生きねばならないと。

身体は痩せ、面色は青白く、声はややかれて低く、歩行は極めて難儀で、息切れは強く動悸があり、医者に心臓の病と言われ、下腹の激痛は腹膜炎とか子宮の問題と言われ、特に耐え難きものは腹痛だという。

脈は沈緊になっていて遅濇で舌は乾燥して胎なし、脈証は正に難治に類で西洋薬であっても中々難しい厄介な病人だった。俗諺においては、大敵と見て驚くな小敵と見て侮るな、言葉卑しと雖も理正に然り、この病人は裏虚に兼ねるに裏寒の症状あり、また血の症状あり脈沈緊はすなわちこれ裏寒、遅濇は則ち血虚しるし、又この人産後より病始めそれより生理不順なっていて、それならば、血の証があることは疑いなし、婦人雑病病の部分に婦人が病虚するによって冷積み気結び諸の経水断絶をなす、歴年血寒あるに至れば‥‥(温経湯の前の条文)

今この方に寒血虚共に、治療することが理想だが、この人は恐らくその薬勢に耐えられない、なので内虚最も甚しいことが原因です。よって内補って先ず一時の急を救い、後は寒血を追い払っていけば、生を動かしていくだろう、これは則ち枝葉を刈って根本を平げる妙計なり、血痺虚労病の小建中湯を服用させる、服用させること7日にきて、お腹の痛みは半ば少なくなり息切れは軽くなり、体は日々軽くなり、気分明朗になっていて、前より薬になった驚いており、近所の方も皆顔色が良くなって、今日の症状と先日みた症状は別人のようである。この調子であれば、血を治すこともさしたる動じないと思って、当帰建中湯と考え、加減法の飴糖六兩を入れて、様子を見たとことろ、患者さんから苦情の連絡があり、今度の薬の変更してから反って体調が良くない、腹痛がまた出てきたと言われた。より深く早まっていたと反省して、さらに小建中湯を服用させてよくなった。

 漢方や鍼灸の臨床をしていると、状況に応じて、血虚でするべきケースと虚労によって先に治療しないといけないのかと非常に紛らわしいことは多々あります。

 古方でも大家と言われる先生でさえも、判断が難しいケースがあるということがわかると非常に勉強になります。

今回出てきた、当帰建中湯と小建中湯について少し書きたいと思います。

この処方のもとになっているものは、傷寒論の太陰のところに記載がある桂枝加芍薬湯がベースでなっています。

小建中湯 桂皮3g 炙甘草3g 大棗4g 芍薬6g 生姜3g 膠飴26g

当帰建中湯 当帰4g 桂皮3g 芍薬6g 炙甘草2g 生姜3g 大棗4g

ここでの大きな違いは、当帰が入っているか、膠飴が入っているかの違いだけで、後はほぼ変わらないのに作用がこんなに変わるとすごく勉強させられることは非常に多いですし、生薬一つ一つ理解しないと漢方は難しいかなと思います。

漢方を勉強したいと思う方の考え方の参考になったら幸いです。